老舗あり

福島県郡山市 駅弁「福豆屋」 お袋の味 非日常を演出 大人気の「海苔のりべん」

 列車のわずかな停車時間に、売り子が大量の駅弁を売りさばく。受け取った代金を落とすこともあるが、拾う暇はない。だから、列車が走り去ると、ほうきとちりとりで、落ちているお金をかき集めていた、という逸話もある。しかし、列車の高速化、とくに新幹線の誕生は、大きな脅威だった。「新幹線は窓が開かない。そうなると、駅弁は終わる」。こう予測した邦利さんは、無店舗販売が主流だった駅弁の売り方を工夫するなど、常に先手を打ち、波を乗り越えた。

 平成7年、邦利さんが他界。長女の裕子さんと、東京でOLをしていた四女の文紀さんが切り盛りすることに。駅弁に携わり、文紀さんが強く意識することがある。それは「非日常の演出」だという。

 「駅弁は単におなかを満たすだけではなく、(旅先など)地のものを味わえるお土産でもある。見た目でおいしさを伝える仕掛けも必要」と文紀さん。だから、詰める料理、パッケージ、ご飯の量…と、細部にまでこだわる。

 では、今、大人気の「海苔のりべん」のこだわりは-。答えは「子供のころ、人前に出すのが恥ずかしかったお袋の味なんです」。

 両親は仕事に追われ、弁当は、間にのりを挟んだご飯に卵焼きが定番。揚げ物もない。「今思うと、たくさんの愛情がこもっていた。だから、どうしても再現したかったんです」