安倍政権が選挙公約に掲げた教育無償化の議論がスタートした。高等教育に加え、幼児教育の無償化も議論の対象となったが、聞こえがよい政策には賛否も渦巻く。「大学全入時代」の今、誰もがタダで行ける制度など本当に必要なのか。(iRONNA)
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今回の衆院選では政党の離合集散が大きな話題を集め、政策論争はいつの間にか忘れ去られてしまいました。しかし、そもそもの解散の理由が消費増税分の教育目的への転換とされ、ここにきて安倍晋三首相も私立高校無償化の検討を表明しました。
まず、極めて当然のことですが、仮に何のコストを払うことなく教育を無償化できるなら、それに反対する人はいません。しかし、そんな魔法のような話はないわけで、教育に限らず、「〇〇無償化」のコストはもちろん、税金から支払われます。したがって、教育無償化の是非は、教育を受ける本人ではなく、「税金」という形で社会全体が負担すべきか否かで決せられるということになります。
現在、わが国においては、義務教育である公立の小学校、中学校は無償化されています。誰もが共通の基本教育を受けることで、国民全体の能力が高まり、社会全体が利益を受けることになるので、これに異論のある人はほとんどいないものと思います。
ただ、日本の税収(国税)は毎年ほぼ50兆円で変わらず増える見込みはありませんから、教育を無償化するには、他の用途に使われていた税金を教育無償化に使うか、増税するかの二つに一つしかありません。
タダより高いものは…
かつて日本には、「教育無償化」ならぬ「老人医療費無料」という政策がありました。昭和48年、高度成長によって毎年伸びる税収を背景に、当時の田中角栄内閣が70歳以上の医療費を無料にしたのです。