あまりに陰惨で猟奇的な事件である。神奈川県座間市のアパートの一室から、9人の切断された頭部が見つかった。
死体遺棄容疑で逮捕された男は9人の殺害と、遺体を損壊したことを認めている。8人は若い女性で、10代の女性も複数いるとされる。
金銭と乱暴目的だったと動機を話す男の異常性ばかりが際立つが、それでいいのか。
逮捕のきっかけとなった行方不明の女性はツイッターに「自殺願望 死にたいけど1人だと怖い」「一緒に死んでくれる方がいたらDM(ダイレクトメッセージ)をください」と書き込んでいた。
男は、自殺を手伝うと伝えて自宅に連れ込み、殺害したと供述している。ほとんどの被害者は同様の経緯で男に誘い出されたとみられる。ツイッターが、犯行の温床となったのである。
インターネット上の「自殺サイト」をめぐっては、平成17年にサイトを通じて知り合った男女3人が男に殺害される事件があり、国やプロバイダー事業者は対処の緊急性が高いとみられる書き込みがあった場合、警察が介入できるようガイドラインを策定した。これを受けて事業者の監視も強まり、多くの自殺サイトは閉鎖した。
だが、ツイッターやラインにより利用者が直接情報をやり取りすれば、監視の目は行き届かない。一方で、「自殺募集」などの語句で検索すれば、多くの投稿を容易に見つけることができる。閉鎖に追い込んだ自殺サイトの代用品となっているのが現実だ。
ネット空間という新たな対象に法整備が対応できているとは言い難い。だが、自殺願望の書き込み自体は犯罪行為に当たらず、法的な規制には限界がある。事業者もそれぞれ、監視体制を構築するなどの対応を進めているが、隠語使用などの抜け道に対し、いたちごっこが続いているのだという。