びっくりサイエンス

死の水にすむ謎の微生物 生きる仕組みは全く不明 日本の研究者が発見

呼吸とエネルギー生産の遺伝子がない!

 泉に管を差し込み、ポンプで水をくみ上げて採取。濾過(ろか)に使ったフィルターに微生物が引っかかっていないか調べるため、DNAを抽出してゲノム(全遺伝情報)を分析した。

 その結果は、チームを仰天させるものだった。地下深くから湧き出る泉に16種類の微生物がすんでいた。しかもその全てが、呼吸をつかさどる遺伝子を持っていなかった。さらに、このうち4種類は体内でエネルギーを生産するための遺伝子すら見当たらなかったのだ。

 生物なら何らかの方法でエネルギーを作り出しているはずだが、その仕組みは全く不明。論文にまとめ今年7月に発表すると、大きな反響を呼んだ。

 これらの微生物は泉の水に含まれるかんらん岩に密集した状態で見つかった。このため鈴木氏は「蛇紋岩化反応に頼って生きている可能性が高い」とみる。ただ、仮にそうだとしても、生きるための具体的な仕組みは全く分からない。

原始生命に手掛かり、地球外でも?

 この泉の水は、生命が誕生した約40億年前の地球の環境とよく似ているとされる。当時の地球では、多くの場所で蛇紋岩化反応が起きていたと考えられるからだ。こうした過酷な環境で原始生命がどのように生き延びたのかは全く不明で、謎に包まれている。

 見つかった微生物は原始生命の特徴をとどめる「生きた化石」なのか、それとも泉の厳しい環境に適応するため独自の進化を遂げた生き物なのか。「いずれにしても、原始生命の生存戦略を理解するための有力な手掛かりになりそうだ」と鈴木氏は話す。

 この研究は地球外生命の探究にも役立ちそうだ。かんらん岩と水があれば、ほかの惑星でも蛇紋岩化反応が起きるとされており、これに頼って生きる生命がいるかもしれないからだ。土星の衛星エンケラドスや木星の衛星エウロパでその可能性が指摘されている。

 先月も現地を調査したという鈴木氏は「こんなに不可解な生命に出合ったのは初めて。彼らが生きる姿を詳しく調べたい」と話す。地下でひっそりと暮らす微生物が、生命の謎を宇宙のスケールで解き明かす鍵になりそうだ。(科学部 草下健夫)

会員限定記事会員サービス詳細