≪疑問を抱く試験の「模範解答」≫
アメリカの医師国家試験の模擬試験問題に、医師による自殺幇助(ほうじょ)の実例が出ているそうだ。33歳の女性ボクサーが、首から下は完全マヒになり、人工呼吸器が取り付けられたが、医師に外してほしいという明確な意思表示をした。どうすべきか。
模範解答は「患者の要求に従って人工呼吸器を取り外す」というものだそうだ。
私がもしも同じ出題をしたら、別の模範解答を用意するだろう。
第1に、彼女は首から下が完全マヒになって、ショックを受けているだろう。プロボクサーだったとすると生活の見通しも立たないかもしれない。気持ちが落ち着き、生活の仕方が定まれば、別の意思決定をする可能性がある。
第2に、33歳の女性はその状態で5年生存する可能性がある。その5年以内に、新しい何らかの治療法が開発される可能性がある。
第3に、その状態が長く続く場合でも、彼女がボクシングの安全性について提言するとか、自叙伝を執筆するとか、別の生きがいを見いだす可能性がある。治療方法の開発に協力することが新しい生きがいになるというのが、最もありそうな可能性である。