1990年代、韓国人の反日意識を大いに高めたのは、「鉄杭(くい)」だった。ソウル近郊の山の頂上で偶然見つかった。日本帝国主義者が植民地時代、韓民族の精気を抹殺するために打ち込んだとの説が広まる。
▼やがて各地の山で、政府主導の引き抜き運動まで始まった。実際は測量のためだったらしい。反日につながる事柄は、真実かどうか確認しないまま、誰もが信じるようになる。世宗大学の朴裕河(パク・ユハ)教授が、『反日ナショナリズムを超えて』のなかで指摘していた。
▼その朴氏が近年慰安婦問題に取り組み、2013年に韓国で出版したのが、『帝国の慰安婦』である。日本版を改めて読んでみた。日本国家だけではなく、娘を売り払った父親やだまして連れ去った業者の責任も追及している。「性奴隷」は慰安婦すべてにあてはまる言葉ではない、ともいう。