アトピー性皮膚炎などの治療に使う医療用保湿剤の美容目的使用が横行していることが、関係者への取材で分かった。「高額な美容クリームより効果がある」と女性間に広がり、化粧品を購入する感覚で病院を訪れ、乾燥肌などと訴えて処方を受けるケースが後を絶たないという。医療費増大にもつながる現状に、医療費の支払いを行う健康保険組合側は「保険適用外とすべきだ」と提言。医療保険の適用範囲などを決める平成30年度の診療報酬改定を前に議論を呼んでいる。
自己負担「ゼロ」も
「究極のアンチエイジングクリーム」「高級な美容液より高い美肌効果」「安い上に効果抜群」などとインターネットで多く紹介され問題となっているのは、保湿剤「ヒルドイド」だ。アトピーなどに伴う皮膚の乾燥、やけどなどの傷痕の治療に使われる。
医師の処方箋が必要で、チューブ型の25グラムの軟膏(なんこう)であれば、薬価は590円。診察費や調剤料などが上乗せされ患者の支払総額は1千円以上かかるが、それでも「数万円する高級な美容クリームより安い」のは事実だ。
子供の医療費が無料の自治体であれば、子供を受診させて自己負担なしで処方を受けることもでき、ネットでは「息子用に処方されたものを使ってみた」などの記述も散見される。都内の小児科医は「子供に出したヒルドイドを母親が使うという話は聞いているが、母親が使っているかどうかを確かめようがない」と対応に苦慮する。