「改革」あれこれ

核抑止力均衡の綻び…偶発危機への緊張感が弛緩、北朝鮮の開発は看過された JR東海名誉会長・葛西敬之

 北の核兵器とミサイル開発はこの地域での米国の威信を損ない、日米、米韓の同盟関係に楔(くさび)を打ち、日米韓それぞれの国内世論を分断するという中国にとって好ましい効果をもたらしてきた。中国が終始一貫して対北制裁に曖昧な態度を取り、北朝鮮のために時間稼ぎをしてきたのはそれ故であり、その結果生じた核抑止力の地域的綻(ほころ)びは中国にとっては想定内だったのだと思える。

 冷戦時代の末期、ソ連が中距離弾道弾SS20を配備して欧州における対米優位を窺(うかが)ったとき、米国がパーシングII中距離弾道弾を配備し、抑止力の均衡を回復した事例がある。その結果、米国、ソ連ともに中距離弾道弾を廃棄するという合意が形成された。

 この先例は比喩的にいえばソ連が「SS20配備」という形で「藪(やぶ)を突いて」、米国による「パーシングIIの配備」という「蛇を出してしまった」、そして結局は元の均衡に戻ったということであり、現下の北朝鮮情勢にも通ずる普遍的な教訓を含んでいる。すなわち、超大国間の核抑止力均衡は、平和の基本条件であり、それが新たな核兵器の配備によって地域的に破綻した場合、均衡の回復は対向する核抑止力の配備によってのみ可能だということである。

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