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日本の太平洋岸を北上する黒潮が12年ぶりに南へ大きく蛇行している。この影響で東海や関東では潮位が上昇し、先週の台風21号による高潮被害の一因になった。漁業や降雪への影響も懸念されており、専門家は大蛇行が1年以上続くとみて警戒を強めている。(伊藤壽一郎)
潮位が30センチ上昇
黒潮は赤道近くの暖かい海水を日本に運ぶ暖流だ。フィリピン東方沖から北上し、総延長は約3千キロに及ぶ。日本では九州から房総半島までの沖合を幅約100キロの帯状に流れている。
通常はほぼ列島に沿って北上するが、今年8月下旬から流路が大きく曲がる大蛇行という現象が起きている。紀伊半島・潮岬沖でいったん南に方向転換した後、U字形に大きく蛇行し、伊豆半島沖で通常の位置に戻る変則コースだ。気象庁が1965年に詳しい観測を開始してから今回で6回目の発生となった。
黒潮の南側は水温が高いのに対し、北側の沿岸部は水温が低い。海水は冷たいと収縮するため東海や関東の沿岸部では通常、潮位は低いが、大蛇行が発生すると逆に上昇し高潮が起きやすくなる。沿岸から沖合にかけて反時計回りの大きな渦が生じるためで、渦の遠心力で潮位が上昇。暖かい黒潮の一部が沿岸に引き込まれて海水が膨張し、潮位上昇に拍車をかける。
列島を縦断した台風21号では静岡県や神奈川県で高潮が発生し、沿岸の東名高速道路や国道はガードレールが波で壊れ通行止めになった。港湾でも多数の漁船や漁業施設が被害を受けた。
気象庁海洋気象情報室の小司(しょうじ)晶子予報官は「東海から関東沿岸の潮位は、台風の前から大蛇行の影響で上がっていた。平年より20〜30センチ高い海域もあり、被害が拡大した」と指摘する。