建設アスベスト訴訟、国・メーカーに3億7000万円賠償命令 元労働者側が逆転勝訴

 一方、個人事業主の「一人親方」については、労働安全衛生法で保護される対象ではないとして、国の責任を認めなかった。

 また、メーカーは「昭和50年4月以降、防塵マスク着用の必要性などを表示すべきだった」として、エーアンドエーマテリアル▽ニチアス▽エム・エム・ケイ▽神島化学工業-の4社に賠償を命じた。

 厚生労働省石綿対策室の話「国の主張が認められなかった点もあり、厳しい判決と認識している。判決内容を十分検討するとともに、関係省庁と協議した上で、対応したい」

東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)の話

 「健康被害の原因となった建材の提供元であるメーカーにも賠償を命じたのは極めて妥当だ。東京高裁の判断ということもあり、同種訴訟に与える影響は大きいだろう。これまでの判決ではシェアの大きいメーカーのみが責任を問われる傾向にあるが、中小メーカーの製品によって健康被害が生じた人も多く、司法救済を広げることが必要だ。国については防塵マスクの着用を義務づけなかったことについて責任を認める流れが定着したが、そもそもアスベスト規制全体について対応の遅れがあった。アスベスト訴訟では判決を迎える前に亡くなる原告も多く、審理の迅速化も大きな課題だ」

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