22日に投開票された衆院選で安倍晋三首相のおひざ元、山口4区では「反安倍」候補による傍若無人な戦いが目についた。言論の自由は最大限尊重されるべきだが、違法でなければ何をやっても許されるという言動がまかり通れば、民主主義の根幹は揺らぎかねない。
17日夜、新人で政治団体代表の黒川敦彦氏(39)は首相夫人、昭恵氏の個人演説会の会場に現れた。夫人らの演説は、森友・加計問題を追及する黒川氏の演説にかき消されそうになった。19日にも安倍陣営の総決起大会の会場入り口に、自らの選挙カーを止め、「安倍首相のお友達を優遇する政治は許せない!」と大声を上げた。
公職選挙法は「集会の便を妨げ、(中略)選挙の自由を妨害したとき」には、4年以下の懲役もしくは禁固、または100万円以下の罰金と定める。安倍陣営への選挙妨害は堂々と行われた。
山口県警下関署の担当者は「違反行為があれば粛々と捜査する」と話した。警察は、下手に動くと、逆に「言論弾圧だ」と言われかねなかった。そんな動きづらい一面があった。
黒川氏はツイッターに首相夫人を取り囲むよう書き込むなど、その行為は目に余った。首相夫人サイドは身の危険を感じ、対応に追われた。
それでも、黒川氏は「街頭の選挙運動に問題はない」と言い放った。選挙戦の後には「法律違反をしない限り、戦い方に多様性はあってよい」とも語った。
だが、こうした異常事態は野放しにしておけない。こんな事態が続けば、公正な選挙とはいえない。 (大森貴弘)