「パパ、くる(心拍が速くなる)…」。小さな顔から大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。恐怖で顔をゆがめ、悲痛な声を上げる体を強く抱きしめるが、「もうダメ」と言い、娘は腕の中で意識を失った。
神奈川県の岡崎俊哉さん(34)の長女、雫(しずく)ちゃん(7)は現在、いつ心臓が止まるか分からない恐怖と闘っている。心臓が十分に成熟せず、隙間が多くなる「左室心筋緻密化障害」と診断された。
3歳の頃、「心臓が大きい」との指摘を受け、精密検査で「何らかの心筋症」であると知らされた。それでも、保育園の運動会に参加するなど、普段と変わらない生活を送っていた。
変化が生じたのは昨年9月。小学校の中庭で突然意識を失った。懸命な救命措置で一命を取り留めたが、心筋症に加えて致死性不整脈(心室細動)を合併した状態にあることを知った。
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いつどこで深刻な状態になるか分からない。突然死を防ぐため、電気ショック機能を持つ医療機器を体内に埋め込んだが、この1年だけで5回以上の心室細動を経験した。2日に3回のペースで発生することもあった。
今は発作直前に見ていたアニメ番組を見ることができなくなった。歩くことすら怖がり、病院のベッドでナースコールを握り締める。「もう、大丈夫だよ」と安心させるために掛けてきた岡崎さんらの言葉を、雫ちゃんは信じることができなくなった。