2015年7月、軍艦島を含めた『明治日本の産業革命遺産』が世界文化遺産に登録されると、韓国内では俄然(がぜん)、「徴用工問題」が浮上し、過去の日本の歴史を糾弾するため徴用工像の建立が始まった。これまでの慰安婦像に比べると、格段に速い反応である。
歴史問題の新たな捏造
これに対して日本政府は「遺憾の意」を示したに止まり、それ以上の措置は取らなかったようである。これでは、韓国側が新たな「歴史問題」を捏造(ねつぞう)し、一方的に民族感情を昂(たか)ぶらせるだけである。
なぜならこの行動様式は、核開発やミサイル発射実験で日本を恫喝(どうかつ)したつもりの北朝鮮とも近いものがあるからだ。相手が下手に出ると増長し、少しでも強硬な姿勢を示すと、今度は必死になって反論を試みるのだ。
一部の評論家のように、この行動様式を揶揄(やゆ)して嫌韓感情を煽(あお)るのも感心しない。彼ら(韓国側)には彼らなりの「正義」があるからで、意味なく民族感情を高揚させているわけではない。彼らとしては、彼らの「歴史認識」を日本側が認めて反省の意を示すことで、自尊感情を充足させようとしているだけなのだ。
歴史的に韓国領であったことのない竹島が、韓国側にとって「民族の自尊心」や「独立の象徴」となるのはそのためで、彼らが問題にしているのは歴史の事実ではなく、歴史に対する認識だからである。
これに対し、日本政府が「竹島は歴史的にも国際法上も日本の固有の領土だ」と発言したところで、彼らは自らの歴史認識の誤りに気がつくはずもない。日本政府は、効力のない発言を何十年となく繰り返し、これからも続けていくことだろう。
韓国が日本海を東海と言い出したのは戦後だ
日本の書店には、嫌韓ブームにあやかって相変わらず韓国批判の書籍が並んでいる。だが、それらは、韓国側を挑発することはあっても、それで日韓の懸案事項が解決することはない。馬に向かって「鹿になれ」といい、鹿に向かって「馬になれ」といっても、馬は馬で、鹿は鹿でしかないからだ。日本は日本、韓国は韓国だということである。相手を攻めるには、その特性を理解し、攻略すべきである。
その一つの例として、近年、日韓の懸案となっている「日本海の呼称」問題がある。この9月、韓国政府が公開した日本語版の広報ビデオ(「過去・現在・未来の名前、東海」)では、日本海について、「2千年以上にわたって使われてきたこの海の最も古い名前、東海」と説明し、ここでも歴史問題としている。