一方で、日本より遅れて、脳死を人の死とする改正臓器移植法が2000年に成立した韓国では、着実な前進を遂げている。
「移植の法的保護と透明性を確保するための組織があり、移植スタッフへの教育が行われている。生体と同じく脳死移植を施行する病院が集中し、よい成績を挙げている」。韓国の移植事情に詳しい神戸朝日病院(神戸市)の金守良院長はそう強調する。
日本でドナーの出現を妨げているのは、脳死を「人の死」と認めにくい死生観があるとされる。脳死の患者の体は温かく、反射もある。韓国でも1990年代初頭まで、脳死の概念は一般に浸透していなかった。しかし94年、人気俳優が車の事故で脳死になり、臓器を提供。この美談がメディアを通じて国民に知れ渡ることになった。
金院長によると、政府主導の下、2000年に中央組織であるKONOS (国立臓器移植管理センター)が、2010年にはKODA(韓国臓器提供機構)が発足した。
臓器斡旋(あっせん)の透明性が確保されるとともに、脳死間近の患者の家族に主治医以外の医療スタッフが臓器提供について説明することが義務付けられている。これは日本と大きく違う。
特に国民への理解のために、大韓移植学会などの専門家集団や、キリスト教、カトリックなど宗教界、NPO(非営利法人)などによる広報活動が積極的であることが大きいという。