衆院選

与党側、組織力で押し切る 東北

 22日に投開票された衆院選で、東北地方の計23選挙区では、自民18、希望1、無所属4の議席が決まった。比例東北の議席は自民5、希望3、立民3、公明1、共産1となった。青森、秋田、山形の3県で自民党が全勝するなど、地力で勝る与党側が組織力で押し切った。野党は共闘が奏功した地域もあったが、民進党の分裂から始まった混乱により、公示直前までもつれた候補者選定の遅れが響くなどして、支持の広がりを欠いた。各県の背景を分析する。

 ■青森 自民ブランド力発揮

 得票数を分析すれば、強固な組織力と候補者のブランド力が自民の勝利につながったと言える。

 象徴的だったのは3区。7月に死去した兄・太郎氏の後を継ぐ形で県職員から転身した木村次郎氏が、太郎氏から引き継いだ後援会組織と同党の固い支持基盤に支えられ、他の3人を寄せ付けなかった。「序盤は弔い戦、中盤から新3区になったことの戸惑いの選挙だったが点から線、面へと支持拡大を図る戦術が奏功した」。選対幹部の一人は鉄の結束の勝利に胸を張った。3区は盤石の「木村王国」を一層、印象づけた。

 2区も党の重鎮、大島理森氏と知名度不足の新人では、選挙戦自体が盛り上がらなかった。前職同士の事実上の一騎打ちとなった1区も同党の組織力を武器に津島淳氏が完勝した。

 ■秋田 1672票差で金田氏圧勝

 自民が前回に続き議席を独占したことで、県民は変革よりも政治の安定を望んだ結果となったが、求められているのは実行力。一方、惨敗に終わった野党は抜本的な組織の見直しという重い課題を背負った。

 自民が前回に続き、3つの選挙区を独占し、比例では希望前職と新人の2人が当選した。

 2区では法相時代、組織犯罪処罰法改正の審議をめぐる国会答弁が不安視された自民の金田勝年氏が、希望新人の緑川貴士氏に1672票差で辛勝。緑川氏は比例復活当選した。

 金田陣営には「報道の影響で女性票が逃げている」(幹部)との危機感が強く応援に安倍晋三首相、小泉進次郎・党筆頭副幹事長ら大物を招いた。その上での苦戦に金田氏は「法案を丁寧に説明して周知しようとしたが、そのスタンスが報道になかった」と、報道への「恨み節」も吐露した。

 緑川氏は衆院選2度目の挑戦で、元アナウンサーの知名度を生かした草の根選挙を展開。地盤の大館市や鹿角市など、リベラル色のある地域で票を伸ばした。

 元保守系同士の争いが5度目となる3区は、自民の御法川信英氏が制し、希望の村岡敏英氏は比例での復活も果たせなかった。

 ■岩手 野党共闘の成否も影響

 区割り変更で選挙区が1つ減っての選挙戦。前回も選挙区を制した前職が支持基盤の固さで勝利したが、野党共闘の成否も影響するかたちとなった。

 本州一広い選挙区となった2区。旧3区から編入された沿岸南部票の帰趨(きすう)が鍵とみられ、地盤としていた黄川田徹氏の票の奪い合いが展開された。結果は、自民の鈴木俊一氏が同地域だけでも希望の畑浩治氏に1万6千票余の差をつけ議席を死守。現職閣僚の強みを発揮した。黄川田氏が「後継者」とした畑氏は知名度不足に加え、公示直前の希望入りで野党共闘が崩れたことも響いた。

 一関市と平泉町が新たに入った3区は、小沢一郎氏が前回1万7千票だった自民の藤原崇氏との差を3万3千票に広げ、現役最多の17選を果たした。無所属での立候補を選択し、共産や社民の支援を取り付けたのが功を奏した。

 一方、藤原氏と、1区で希望の階猛氏との差を前回並みに食い止めた自民の高橋比奈子氏は比例で復活当選した。

 ■宮城 自民、5選挙区で勝利

 6選挙区のうち、5選挙区で自民が勝利し、前回と同じ顔ぶれとなった。

 6人が乱立した1区は自民の土井亨氏が4選。前回の衆院選まで土井氏と接戦を繰り広げてきた郡和子仙台市長が事務所に訪れると土井氏は「ノーサイド、ノーサイド」と連呼。郡氏は「長年、土井さんと戦ってきた立場ですが、仙台市、宮城のためにご尽力いただきたい」と固く握手した。

 一方の立民の岡本章子氏は比例代表で復活当選。「安倍政権ノーを示したかったが力不足だった。国政で思いに応えられるよう取り組みたい」と話した。

 一騎打ちの2区は大接戦の末、自民の秋葉賢也氏が議席を死守。退路を断って無所属で臨んだ鎌田さゆり氏は野党共闘で追い詰めたが、一歩及ばなかった。

 野党系で唯一選挙区の議席を守った5区の安住淳氏は「(安倍政権の)支持率が下がっているのに与党を勝たせるのは野党がだらしなかったから」と悔しさをにじませた。自民前職の勝沼栄明氏は比例復活とならなかった。

 ■山形 希望失速で自民有利に

 自民が前回選に続き1〜3区で全勝。公示前、民進系3氏が希望入りし自民対希望の構図になったが希望失速で結果として、自民にとって戦いやすい選挙になった。

 注目の3区は、希望元職阿部寿一氏が自民前職加藤鮎子氏に2万票以上の大差で敗れた。15日の鶴岡市長選で阿部氏支持の新人が初当選し阿部氏優位が期待されたが、自民は人気弁士を多数投入して形勢を逆転、大勝した。

 1区は希望荒井寛氏が堅い票の伸びを示したが、8期目を狙う遠藤利明氏に及ばなかった。遠藤氏は「1区は10万票取れば安心だが(相手陣営は)地盤も近く、動き方も見えず戦い方が難しかった」と追われる戦い方の難しさを吐露した。

 野党共闘が確立できなかった2区では、希望近藤洋介氏が22日深夜、「小池百合子氏に党首の資格はない」と恨み節。比例復活を期待したが、かなわなかった。

 ■福島 結果的に自民の完勝

 選挙区は平成26年の前回同様、自民3、非自民2となった。しかし、自民は比例復活で2議席を積み増し、5議席獲得の完勝だったといえる。

 1区は、前回約5千票差で敗れた無所属金子恵美氏が、民進、共産、社民の支援を受け、今回は逆に1万3千票差を付け、選挙区では自民亀岡偉民氏から議席を奪った。

 2区は元復興相の根本匠氏が序盤から、希望の岡部光規氏らを圧倒。また、希望合流をめぐる一連の騒動から、無所属で打って出た3区の玄葉光一郎氏は、後援会組織がフル回転。危なげない選挙戦で早々に9選を決めた。雪辱を期した自民上杉謙太郎氏は、選挙区では敗れたものの、比例復活で念願の議席を得た。

 4区は今回も自民菅家一郎氏と希望小熊慎司氏が大接戦を演じ、菅家氏に軍配が上がった。自民は最終盤の注力が奏功。小熊氏は一歩及ばず、比例で復活。

 5区は現職閣僚の吉野正芳氏が希望吉田泉氏らの追随を許さなかった。

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