生命の設計図である遺伝情報は細胞の核内にある長い鎖のようなDNA分子に書き込まれている。そのDNA分子に含まれる4種類の核酸塩基という分子の並び順(配列)が、暗号のように多数の遺伝子を示していて、遺伝子が働くときは、その部分の配列をRNAという分子がコピーして情報を伝え、生命の営みに必要なタンパク質をつくり出す。コピーされた分子の数が多ければ多いほど、その遺伝子は活発に働いていることになる。
こうしたことから、その配列を読み解けば、個々の遺伝子や遺伝情報の全体像がわかるのだが、ヒトの場合では、塩基の数が約30億個もある。そこで、一度に1000万個〜100億個もの塩基の配列を決定する装置として次世代シーケンサーが開発されている。
理化学研究所生命システム研究センターの城口克之(しろぐち・かつゆき)ユニットリーダーらの共同研究チームは、この次世代シーケンサーを使い、一度に1万個以上のDNA分子やRNA分子を正確に数える手法を開発した。配列が異なる複数の短いDNAを商品タグのように目印として対象のDNA分子などに付け、それを手掛かりに分類して集計するもので、複数の試料が混在することで起きるエラーを解決できることも実証した。これにより、例えば、がんに関わる遺伝子がどれだけ働いているか、血液を採取して初期の段階で突き止めるなど幅広いバイオの分野での応用が期待できる。この成果は英科学誌「サイエンティフィックリポーツ」に掲載された。