「実費より高い電気料金を請求された」として宮崎市のテナントビルに入居する企業が、ビルの家主を相手取り、過払い金の返還を求めた訴訟で、東京地裁が9月、実費を超えて支払った計約257万円の返還を命じる判決を言い渡した。訴訟では「電気料金」として請求されていた金額の中に、電気設備の維持費などが含まれていたことが判明。家主側は維持費などを上乗せすることは「商慣習」だとしたが、地裁はこの主張を退けた。一方、テナントビルをめぐっては各地で類似の請求例があり、ビル業界に詳しい関係者は「気付かずに実費以上を払っている事業者は多い」と指摘する。(社会部 加藤園子)
(※10月8日にアップした記事を再掲載しています)
知らないうちに「黙示の合意」
平成27年、宮崎市内のビルに営業所を移した企業の担当者は、家主から届いた請求書を見て首をかしげた。「以前のビルよりだいぶ高い」。移転前の営業所より面積は広くなったが、電気料金が予想以上に跳ね上がっていたという。
一般的にテナントビルは電力会社から一括で電力の供給を受け、受変電設備を通じて各テナントに電力を供給している。このため電力会社と個々の世帯が直接契約を結ぶマンションなどと違い、家主が電力会社と一括契約した上でまとめて料金の支払いを済ませ、家主が各テナントに料金を請求する。
家主から高額な請求が続いたため、企業側が九州電力の料金表を基に計算すると、どの月の請求額も実費の3〜4倍に上っていた。家主に理由を尋ねると「うちはその分、他のビルと比べて賃料を安く設定している」と告げられた。結局、納得のいく回答は得られないまま、27年2月から29年4月までに計約358万円を支払ったという。