日曜講座 少子高齢時代

AIでも人手不足 影響受ける職種の対応急げ 論説委員・河合雅司

 増えるのはホームヘルパー、介護職員(約107万9千人増)、販売従事者(約46万5千人増)、技術者(約45万3千人増)、サービス業(約35万7千人増)などだ。

 工場のラインにおける定型的な仕事や単純な事務といったパターン化しやすい業務はこれまで以上に減るが、営業や対人サービスのような人情の機微が欠かせない仕事や、熟練した技能を必要とする職種はAIでは対応し切れないということであろう。

 優先すべきはベーシックインカムの検討ではなく、「専門性の高い技術能力」であり、AIではでき得ない「人間的なコミュニケーション能力」を身につけた人材の育成であることが分かる。

 そもそも、ベーシックインカムの実現は非現実的な政策であると言わざるを得ない。1億2000万人の国民に毎月10万円を支給しようとすれば年間144兆円かかる。この額には医療・介護、保育といった現物給付にかかる費用は含まれない。

 ましてや失業者が増えるということは、税収が減るということでもある。大量の失業者対策としてベーシックインカムを考えること自体に無理がある。

まず基礎知識の習得を

 では、今後どういう人材を育てたらよいのか。まずはAIを正しく理解するための基礎知識を習得し、AIを取り入れた新たなシステムやツールを使いこなす能力を身につけることである。

 AIを正しく理解する人を増やすことは、AIの普及を加速させることにもなる。AI開発には(1)実験環境の中で技術的に確立すること(2)実用化されること(3)多くの人々が安価で簡単に利用できるようになること-といった段階がある。多くの人々が使いこなすようになって、はじめて社会に定着するからだ。

 さらに、AIによって仕事を奪われる人たちが別の仕事にシフトするための再教育も重要だ。教育機会を逸しないよう時間の確保と費用の支援が求められる。

 人口減少が深刻化する日本にとって、AIをはじめとするイノベーションは不可欠である。AIが一般化する時代に備え、個人や企業はもとより政府の対応が急がれる。

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