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秋田発 大手生保と自治体の包括連携進む

 ■地域密着で健康寿命延ばせ 

 大手生命保険会社と自治体が、県民の健康増進と地方創生で手を組むケースが増えてきた。明治安田生命は秋田をはじめ4県と包括連携協定を締結。県出身で山形支社長も務めた鈴木伸弥会長(62)は、がん死亡率、自殺率など全国ワーストの指標が多い「課題先進県」の秋田で、営業職員による高齢者への声がけなど、健康寿命を延ばす取り組みを強化。全国のモデルケースとしたい意向だ。 (藤沢志穂子)

 9月9日に、秋田市の県立中央公園で開かれた60歳以上のスポーツの祭典「ねんりんピック秋田2017」の開会式では、明治安田生命の職員、約20人がボランティアとして受付や誘導に協力。12日までの大会期間中には市中心部で、運動機能や自律神経バランスの測定ブースを設置、多くの参加者が訪れた。

 ねんりんピックでは県が明治安田にスタッフ派遣を依頼。「職員が地域に役立てる実感を得られた」と鈴木会長は言う。

 明治安田生命は2月の秋田を皮切りに愛媛、宮崎、高知の4県と包括提携。内容は高齢者の見守りから結婚・出産・子育て、交流人口の拡大、地域社会の活性化と多岐に渡る。最初に秋田を選んだのは、ワースト指標の多い「課題先進県」であることが関係している。秋田での試みは、全国のモデルケースとなる可能性があるからだ。

 ◆7項目ワースト1

 県が9月に発表した統計によると、秋田は▽出生率(人口1000に対して5・6)▽死亡率(同15・1)▽がん死亡率(人口10万に対して421・3)▽脳血管疾患死亡率(同161・6)▽自殺率(同23・8)▽出生数から死亡数を引いた自然増減率(同1000に対しマイナス9・5)▽婚姻率(同3・5)の7項目でワースト1。

 4月には人口が100万人の大台を割り、人口減少と少子高齢化の加速に歯止めがかかっていない。

 課題解決に向け、明治安田が力を入れているのが高齢者対策だ。保険契約の顧客は高齢化が加速。県内で約350人いる営業職員が、顧客訪問時に、交通事故や特殊詐欺の被害防止のチラシを配布、声がけや見守りを強化している。

 「高齢化の進む東北地方では『フェース・トゥ・フェース』が特に重要。地域で孤立していく人をどう支えるか。健康増進には毎日のウオーキングなど、地味な努力が必要。営業職員が『一緒にやりましょう』と、肩を押せる存在になるのが理想。そうしなければ社会保障費の増大は抑えられない」と鈴木会長。

 ◆地方創生にも一役

 一方、地方創生では、サッカーJリーグのスポンサーとしてのネットワークを生かした取り組みを進める。県唯一のJリーグ、J3ブラウブリッツ秋田が、J2昇格の条件であるスタジアム建設に向け、県内外から集めた署名、約18万筆のうち、2万4千筆以上を集めた。

 「サッカーは子供から高齢者までが一緒に応援できる。スタジアムはチームの試合や練習用だけではなく、医療施設やフィットネスクラブを設け、地域の皆さんが集まり、健康増進にも役立てる場所になってほしい」と鈴木会長。

 県は10月、第一生命とも健康増進や地域の活性化、女性活躍推進などで包括連携協定を結んだ。第一生命は秋田を含む15都道府県と同様の協定を結んでいる。

 こうした大手生保の狙いについて、保険アナリストの植村信保さんは「地域貢献に加え、地域密着型の営業戦略を支援する意味もありそう」とみる。効果が見えてくるのは、これからになりそうだ。

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