書評

書評家・大矢博子が読む『盤上の向日葵』柚月裕子著 壮絶な現代版「砂の器」

 読者はこの二つの筋がどう交わるのか予想しながら読むことになる。序章で少年の未来は明かされているし、駒の在(あ)り処(か)にしても警察より先に情報が与えられるのに、それでも全体像が見えないじれったさたるや。実に練られた構成のミステリなのである。

 だがやはり圧巻なのは少年の壮絶な半生だ。夢を与えてくれた人と夢を妨害する人の狭間(はざま)で少年は足掻(あが)く。特に、彼の人生を変えることになる真剣師(賭け将棋指し)の個性が強烈。金に汚く、身を持ち崩しても、将棋にだけは血を吐くような執念を見せる。その先に待つのは栄光か、破滅か。読者は彼と一緒に狂気の奔流に巻き込まれる。

 宿命を背負った若者と全国を駆け回る警察という構図をはじめ、作品の随所に松本清張『砂の器』へのオマージュを感じた。柚月裕子の挑戦が光る一冊だ。(中央公論新社・1800円+税)

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