【モスクワ=黒川信雄】ロシアのプーチン大統領は5日、訪露したサウジアラビアのサルマン国王と会談し、シリア情勢などを協議した。ロシアは、自国が後ろ盾のアサド政権軍が内戦で優勢を維持するなか、同問題をめぐり外交攻勢を強めている。反体制派支持のサウジが歩み寄ってきていることをアピールし、自国に有利な形で和平協議を加速させる思惑がある。
サウジ国王がロシアを公式訪問したのは初めて。
会談でサルマン国王は、シリア問題の「政治的解決」が必要と強調。プーチン氏にサウジ訪問を要請し、プーチン氏は受け入れた。両氏は石油市場の安定化に向けた協力の推進でも一致した。
アサド政権存続をめぐり対立した両国だが、9月にラブロフ露外相と会談したサウジのジュベイル外相は「アサド氏の早期退陣に一切言及しなかった」(国営ロシア新聞)とされる。露軍が2015年9月にシリアで空爆を開始して以降、アサド政権が国土の半分を回復したとの報道もあり、同政権は「シリアをまとめられる唯一の勢力」(専門家)と認識されつつある。
ロシアは他国への働きかけも強めている。プーチン氏は今年8月にイスラエルのネタニヤフ首相、9月にトルコのエルドアン大統領と相次ぎ会談。トランプ米大統領とは7月、シリアの一部停戦で合意した。
ロシアが外交交渉を急ぐ背景には、来年3月の露大統領選を前に内戦への関与に一定の区切りをつけたいとの思惑も指摘される。今月3日には戦闘で過激派の捕虜となったロシア人とされる映像が流出。露軍関係者の死者数が公表より多いとの報道もあり、軍事介入による巨額の財政支出も指摘される。同問題がロシアのアキレス腱(けん)となるのを避けるのに躍起だ。