ラスベガスを語るのに欠かせないのが、「バグジー」(虫けら)のあだ名を持つギャング、ベンジャミン・シーゲルである。1940年代、ニューヨークのマフィアから送り込まれた小さな田舎町に、大きな可能性を見いだした。
▼仲間から資金を集め、カジノを併設した大型ホテルを開業したものの、さっぱり客足が伸びない。まもなく愛人宅で射殺される。資金が回収できないとみた、マフィアの仕業とみられる。皮肉なことにシーゲルの死後、ホテルの経営は上向いていく。
▼ラスベガスはマフィアに牛耳られながら、ギャンブルの街として発展していく。80年代に入ると、そのマフィアも一掃され、治安も格段によくなった。現在では、年間観光客が4000万人を超える、家族で楽しめる街に生まれ変わった。
▼その中心街にある屋外コンサート会場におびただしい数の銃弾が撃ち込まれ、59人が命を失った。逃げ惑う観客をあざわらうような犯行は、マフィアも顔負けの非道である。米国での史上最悪の銃乱射事件は、観光都市のイメージに大打撃を与えそうだ。