私がダイバーシティ(多様性)という言葉と初めて出合ったのは20年以上前、米国だった。少数派の人を守る、差別をなくすという消極的な理由ではなく「組織が多様だからこそ、それが力になる」との信念で、多くの企業が結果を出していた。
例えばあるスポーツメーカーは女性社員の意見を積極的に取り入れ、女性向けシューズやウエアの売り上げを伸ばしていた。性別だけでなく、価値観や能力、経験の多様性にも焦点をあて、強みに変えていた。
残念ながら日本では、「ダイバーシティ=女性活躍推進」という「ダイバーシティ1・0」で足踏みしている企業が多い。だが女性だけを活躍させる発想は、時に不公平感を生む。最も重要なことは、属性にとらわれず、意見や視点の多様性を生かすことにある。誰もが自由に意見を述べ、時には衝突を乗り越えて新しい価値を生む風土を作る。それこそがダイバーシティ経営の肝なのだ。