においには形がない分、漢字の使い分けに悩まされることが多い。鼻をくすぐれば「匂い」になり、鼻を突けば「臭い」になる。サンマを焼いて辺りに漂うのは「匂い」だろう。元から断ちたいのは「臭い」である。
▼この頃、鼻先をかすめるキンモクセイの香気には迷う。秋の深まりを思う人もいれば、消臭剤と結びつけて顔をしかめる人もいる。花に罪はないものの、間を取って「におい」とするのが無難かもしれない。くゆらす紫煙も強い香水も、やはり「におい」組だろう。
▼人はとかく他人のにおいに鋭い。「解党」が決まるや雪崩を打って希望の党に押し寄せる民進党の議員らだが、政治信条という固有のにおいは、容易に消せるものでもない。各紙をにぎわす「排除」の論理は、政界で生き抜くために鍛えた嗅覚の発露というわけか。
▼憲法改正や安全保障法制への考え一つを取っても、隔たりは容易に埋まるまい。「希望」は小池百合子代表や一部の側近が、敵か味方かのかぎ分けをすでに始めている。味方のふりをした、議席欲しさのすり寄りということもある。新党の嗅覚はさて、どうだろう。