「それで?」「それからどうなったの?」。虐待や性的被害に遭った子供からこんな風に聞き取る「司法面接制度」を導入する動きが法務・検察当局で本格化している。家庭内の「密室」で起きる児童虐待は、事実認定が難しいのが特徴だ。被害者の子供の供述は重要だが、何度も聴取を受けているうちに記憶を混同させ、供述が変遷することもある。無罪判決も相次いでいることから、法務省と最高検が虐待の専門知識を検事に学ばせる研修を始め、検事の捜査能力向上に乗り出した。
「記憶の汚染」防げ
司法面接は「フォレンジック・インタビュー」の訳語。もともと米国などで、子供への不適切な事情聴取から無罪判決が相次いだことで開発された。
「昔から手探りでやってきたが、学校の先生や親に子供の記憶が汚染されてしまうということが問題だった。子供の生の声をどうやって引き出すかが重要だ」
検察幹部の一人は、研修の意義をこう強調する。子供は認知機能の発達が未熟のため、何度も聞き取りを重ねると他人の言葉を自分の記憶と混同させることがある。「記憶の汚染」といい、児童虐待事件の捜査で課題になっていたという。
「事件について辛い部分の話を聞くのは1回だけだ」と話すのは別の検察幹部。児童相談所や警察、検察と複数の機関がそれぞれ聴取を行えば、子供に何度も嫌な体験を思い出させかねず、精神的な二次被害が引き起こす恐れがある。