国民の自衛官 横顔(4)

「日頃から意識」研修中に人命救助 陸自東部方面後方支援隊第102不発弾処理隊

人命救助により小笠原村から感謝状を贈呈された福島(前列左から2番目)、(後列左から)増田、町島、中森の4氏 (陸自東部方面後方支援隊提供)
人命救助により小笠原村から感謝状を贈呈された福島(前列左から2番目)、(後列左から)増田、町島、中森の4氏 (陸自東部方面後方支援隊提供)

 転覆したカヤック。その傍らに身動きの取れない男性が浮いていた。東京都小笠原村父島沖200〜300メートル。3月にしては肌寒かったため、福島章3等陸佐は「水も冷たいし、体が固まって動けなくなったんだろう」と考えた。

 不発弾処理の任務を終え、一緒に戦跡研修に来ていた中森勇2等陸尉、町島直樹陸曹長(現第6後方支援連隊第1整備大隊)、増田雄介3等陸曹の3人と協力して男性を小型船に引き上げた。

 衰弱して声も出ない状態だった男性にビニールシートをかぶせて体をさすったり、声をかけたりしているうちに少しずつ会話ができるようになった。港で救急隊に引き継ぎ、男性は事なきを得た。福島3等陸佐は「『自衛官なので人を助けなければ』ということしか頭になかった」と当時を振り返る。

 4人は不発弾処理隊として24時間365日、年間約350件あるという不発弾発見の通報に備えてきた。道路工事中に発見された500ポンド爆弾、新幹線の車両工場から発見された艦砲弾…。多種多様な不発弾を適切に処理し、国民の安全を守る。人命救助も根本は変わらない。

 「日頃から人を助けるという意識がなければ、難しい判断がすぐにできない」と福島3等陸佐。「不発弾処理隊は365日緊張感を持って仕事をする。ああいう場面ですぐに動けなくてはならない」との信念を強く持ち、日々生活している。(川上響)

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