話の肖像画

建築家・安藤忠雄(4)胆嚢、十二指腸、膵臓…なくても 面白いんじゃないかと

安藤忠雄氏
安藤忠雄氏

 〈2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の建設計画で、国際デザインコンペの審査委員長を務めた。平成24年11月に審査委員会はイラク出身の建築家、ザハ・ハディド氏の案を選んだが、その総工費が当初予算1300億円から大幅に膨れ上がることが後に判明。批判が集まった〉

 われわれ審査委員は、スポーツの躍動を感じさせる、ダイナミックで新しい姿の建築としてザハのデザインを選びました。その後、約1年たって発表された基本設計案の概算工事費は、予算を上回る1625億円でしたが、努力次第でコスト削減は可能だとみていました。

 ところが27年6月になって、実施設計の建設コストが2520億円にのぼると判明し、「安藤さんの責任だ」とあちこちで批判を受けました。

 〈結局、1カ月後の7月半ばに会見を開くに至るも、その後、ザハ案は政府により白紙撤回された〉

 一番の問題は、審査員の権限と役割がどこまでかという取り決めが曖昧(あいまい)だったところにあると思います。デザインを選んだ責任はわれわれ審査員にありますが、コストコントロールに関しては、権限もなく、そのための情報もありませんでした。仕切っていた文部科学省は、大きな建設事業を手掛けた経験もなかった。責任の所在や役割分担が曖昧なまま事業を進めていく日本的なシステムのあり方が問題ではなかったかと思います。当初のザハ案が白紙撤回された後、結局、(当初は必須条件とされた)開閉式屋根や空調設備などコストの膨らむ項目を外した新しい条件で、コンペは仕切り直しとなりました。

 〈近年は大病も経験した〉

 21年7月に指揮者の小澤征爾さんと食事をした際、お互い才能はともかく、元気だけが取りえだねというような話をして笑い合ったんです。ところがその翌月、健康診断がきっかけで十二指腸乳頭部に腫瘍があるとわかり、胆嚢(たんのう)と胆管、十二指腸を全摘することになりました。不安はあったけど、術後徐々に体調は回復、仕事もこなし始めた直後、今度は小澤さんに食道がんが見つかったと聞いて…。無事復活されて安心しましたが、人生は何があるか分かりません。

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