同特集には左派哲学者アルテミー・マグーンの論文も訳出されているが、極右のドゥーギンと併載されることにマグーンが強く反発した、という経緯も記されているのが面白い。乗松によれば、ロシア論壇ではプーチン支持派と反対派は完全に分断されており、同じ雑誌に名前を連ねることは考えられず、日本で言えば「百田尚樹と國分功一郎を並べているように見える」。知識層の分断とタコツボ化は、日本に限った話ではないのだ。そしてこの比喩を受け、同誌を主宰する東浩紀は巻頭言でこう述べる。「ほんとうは現代日本についても、百田尚樹と國分功一郎を並べる論集をだれかがつくったほうがよい」。同誌が目指す批評性のあり方が、よく示されている。
中央公論の馬立誠「人類愛で歴史の恨みを溶かす」は、2002年に人民日報論説委員として日本との関係改善を訴え話題になった論文「対日関係新思考」の第3弾。ただ、訳者の杉山祐之の解説にも詳しいが、途中で唐突な習近平賛美が挿入されるなど、言論統制がますます強まる習体制下の中国において、これまで以上の慎重さが要求されるようになったことがうかがい知れる。