論壇時評10月号

「第四の政治理論」の危険な魅惑 文化部・磨井慎吾

その中でも、特に興味深かったのがプーチン政権やロシア軍に影響があるとされる「極右」哲学者アレクサンドル・ドゥーギンの「第四の政治理論の構築にむけて」。第四というのは、現代世界の支配的イデオロギーであるリベラリズムを「第一」、それに対抗しようとして敗れたコミュニズムとファシズムをそれぞれ「第二」「第三」と位置づけ、これら3つを超える政治思想を打ち立てようとする試みだからだ。

ハイデッガーやポストモダン思想を援用しつつ、レイシズム(人種主義)を除去した上でファシズムを再活用しようとするドゥーギンの模索は刺激的で、危険な魅惑に満ちている。この論文で「第四の政治理論」の明確な姿が示されるわけではないのだが、訳者の乗松亨平が「解題」で指摘するように、「ポストモダンにおけるリベラルの行き詰まりを打破しようとする、ひとつの(野蛮なほどに)力強いかたち」として、そのパワフルな文体とも相まって怪しい魅力を放つ。

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