JR九州「マチナカ」へ 九大跡地に「六本松421」開業 福岡

 JR九州が、九州大六本松キャンパス跡地(福岡市中央区)に建設した複合施設「六本松421」が26日、開業した。「手の届く上質な日常」をテーマに23店が入る。同社がJR沿線を離れて手掛けた初の大規模事業であり、福岡のまちづくりをめぐる西日本鉄道との競争は、新たな局面に入った。 (高瀬真由子)

 「JR九州30周年の年に完成させることができ、本当にうれしく思う」

 26日、開業式典であいさつした青柳俊彦社長は終始、笑顔だった。高島宗一郎市長も出席し「六本松が育んできた知の拠点を受け継ぎ、より魅力的になることを期待している」と激励した。

 高級スーパーや飲食店、市科学館、蔦屋書店などで構成される。「421」は同地の住所「4の2の1」を指す。JR九州グループが展開する分譲マンションも隣接し、周辺には検察庁や裁判所なども移転する。

 今回の施設誕生が、周辺の再開発を誘導する可能性は大きい。蔦屋書店を運営する「九州TSUTAYA」(福岡市)の鎌浦慎一郎社長は「六本松は進化が途絶えない街になる。魅力的なエリアをこれから作っていける」と強調した。

 「六本松421」は、地下鉄七隈線の六本松駅前にある。七隈線は博多駅に延伸する予定であり、エリアとして注目度は高い。

 JRが手掛けた分譲マンションは平均5200万円と、市内でも高価格帯だったが、全351戸が発売から4カ月で完売した。

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 福岡市のまちづくりは長く、天神エリアを地盤とする西鉄と、博多駅を中心とするJR九州が、牽引した。その競争は「天神VS博多」と評されてきた。

 六本松開発は、JR九州が初めて、自社の駅・沿線を飛び越え、「マチナカ」に打って出たプロジェクトとなる。その本気度は周囲を驚かせた。

 分譲マンションなどを含めた一帯開発の総事業費は、土地取得代を含め約280億円に上った。

 青柳氏は「六本松は、今後の事業の試金石になるといっても過言ではない。これからが勝負だ」と力を込めた。

 「今後」とはどこか。

 地場の企業関係者を驚かせたのは、青柳氏が8月、福岡・天神地区にある大名小学校跡地の開発に意欲をみせたことだった。

 西鉄は、天神で商業施設「ソラリアステージ」などを展開し、大名小跡地でも、隣接地を含めた一体開発を視野に入れる。

 ライバルの本拠地への進出。JR九州の本気度は計れないが、周辺企業からは「さすがにやりすぎじゃないか」との声も上がった。

 青柳氏は六本松421の開業式典で「福岡市が住みやすい都市で日本一になるために、六本松から発信できればと夢を描いている」とあいさつした。

 西鉄グループの企業メッセージ「まちに、夢を描こう。」を意識した言葉とも、受け止められる。

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 西鉄は表面上、冷静さを見せる。

 JR九州のマチナカ進出に対し、西鉄の倉富純男社長は今月8日の記者会見で「いい街づくりができれば福岡が発展し、私たちも成長できる。福岡だけでなく、首都圏やアジア全体を見据えたマーケットの中の話であり、むしろ積極的にやられることは、アライアンスができるチャンスも多い」と語った。

 倉富氏の視線の先には、海外事業がある。西鉄は4月、阪急不動産とともに、ベトナム最大の都市、ホーチミンで大規模な住宅開発に着手すると発表した。海外不動産事業のノウハウを蓄積し、東南アジアでの開発を推進する。

 とはいえ、両社とも不動産事業はグループの収益を支え、街の魅力向上は、鉄道の活性化につながる。両社にとって、まちづくりは決して負けられない戦いだ。

 中でも、本丸である天神エリアの開発でJR九州がライバルとなれば、心中穏やかではいられるはずもない。10月にも始まる大名小学校跡地の事業者公募の行方を、関係者は注目する。

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