凄惨な殺人事件が国際的に衝撃を広げている。パキスタンで駆け落ちを試みた10代の男女が、「集落の決定」で感電死させられたのだ。理由は「名誉を汚した」ため。同国ではこうした「名誉殺人」が横行。年間千人が殺害されており、昨年には同国初のネットアイドルと呼ばれた女性も兄に殺された。背景には、自由な恋愛への伝統的な拒否意識や、影響力を持つ「長老会議」の存在が浮かぶ。
(外信部 森浩)
長老会議が決めた処刑 「名誉を傷つけた」
事件が発覚したのは、9月中旬。英BBC放送(電子版)によると、8月に同国南部の都市カラチで死亡した10代の男女に対し、感電死の疑いが浮上した。端緒は関係者の証言だったという。
警察当局が約1カ月前に埋葬されていた2人の遺体を掘り出したところ、腕や足に感電させられたとみられる痕跡が見つかった。解剖を担当した医師は同国の地元英字紙ドーンに対し、「あきらかな拷問や電気ショックの痕だった」とコメントしている。
警察が殺人事件として捜査した結果、容疑者が浮上した。2人の駆け落ち計画を聞いた部族の長老たちが殺害を決定していたのだった。
ドーンによると、駆け落ちしようとした2人に対し、8月15日に30〜35人が参加して開かれた長老会議は処刑を命じたという。理由は「見せしめのため」。会議が婚前交渉などを疑い、「不適切な関係」と認定したとみられる。
実行犯として、電気ショックを決行したのは2人の親族だった。