マッド三枝が行く!!

「被告は遺族に5510万円払え」判決もどこ吹く風 犯人の家族は無借金で家を構え、1円も支払わず 司法に置き去りにされる犯罪被害者の遺族

 「俺の顔、覚えてないの」

 女性はなおも首をかしげている。

 「横浜の渡辺だけど」

 離れたところにいた夫とみられる男性が近づいてきた。

 「何か言うことないのかよ」

 「冗談じゃないぞ」

 娘を惨殺された親として許せなかった。すでに民事裁判では5510万円の賠償命令が確定している。それなのに、1円とて支払われていない。おまけに謝罪の言葉も何もないのだ。

 「弁護士に頼んであるから」

 ボソボソと父親は答えた。

 「じゃあ、電話しろよ」

 奥に入ると、東京の弁護士に電話をしている声が聞こえた。

 「弁護士が『こちらに任せてくれ』と言ってるから」

 「本当にうちのせがれがやったかどうか、分からない」

 とりつく島がなかった。渡辺さんの心は虚しさで一杯になった。

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