松井守男さん 長崎・五島で創作10年 「島が僕に絵を描かせる」

 久賀島で描くようになって、日本人の美しさを再発見した。「筋骨隆々で足が長い西洋人ばかりをモデルにしていたので僕の目は西洋人の目になっていたし、日本人の体形にコンプレックスさえ抱いていた。だが、島の人をモデルにしていたら、太くてたくましい足だとか顔立ちに美を見いだすことができた」と語った。

 松井さんが描くのは油彩の抽象画で、幅10メートルもある巨大なキャンバスの作品を得意とする。そして、コルシカ島を「世界一乾燥した島」、久賀島を「世界一湿気がある島」と表現する。コルシカでは描くとすぐに絵の具が乾く理想的な環境だという。これに対して久賀島は乾くのに1週間かかる。「それゆえ絵の具が混じり、微妙な色になる」。それぞれの島で印象の異なる作品が完成するゆえんだ。

 パリの美術学校で学んでいた20代のころ、ピカソを訪ね、さまざまな助言をもらった。それが松井さんの支えになっている。ピカソはミレーの代表作「晩鐘」を引き合いに、「フランスのバルビゾンに行けばああいう風景はどこにでもある。彼はそれを描いただけ」。人間の才能の差は小さく、いい絵が描けるかどうかは、描ける場所に導かれるかどうかだという意味だ。「島に導かれた」と松井さんは感じているという。

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