つかず離れず
このケアマネジャーのような「キーパーソン」が近くにいることで、老老介護であっても穏やかに暮らしているケースもあるのだなと感じた。この先、2人の生活が成り立たなくなったとしても、キーパーソンがいれば、施設に入居するなどの解決策を提示してもらうこともできるだろう。同居は無理だという子供でも「つかず離れずの距離」で親を見守ることで、「老親の2人が共倒れ」になるような事態を防いだ例もある。
芥川賞の選考委員などを務めた作家、大庭みな子さんの介護を続けてきた夫の利雄さんの日記には「介護はセカンドハネムーン」だと記されていたという。1+1=2にはならなくても、0・5+0・5=1で良しとして「今日一日が無事に終わった」ことに安堵(あんど)する老老介護の日常。そこには2人だけが共有するスローな時間が流れている。マスコミがあまり報じない「穏やかな老老介護」があることも最後に書き添えておきたい。
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【プロフィル】小山朝子氏(こやま・あさこ) 介護ジャーナリスト、介護福祉士。昭和47年、東京都生まれ。20代から約10年間、洋画家の祖母を介護。その経験から、介護分野を専門とするジャーナリストとして活動を始める。講演や執筆のほか、日本在宅ホスピス協会役員なども務める。近著に児童書『世の中への扉 介護というお仕事』(講談社)。