■母国の本格ソーセージで革命を
8月末の豪雨被害にも負けず開催された「大曲の花火」大会の最寄り駅、JR大曲駅から車で30分ほど走った田んぼの真ん中にえんじ色の建物がそびえ立つ。「ポルミート」ブランドでソーセージ・ウインナーを製造・販売する「IMI(アイエムアイ)」の工場兼本社だ。併設の直売所には客がひっきりなしに訪れる。ポーランド人で来日15年近くになるタベルスキ・マイケル社長(35)が、秋田弁なまりの日本語で接客する。「買ってくれたらオマケしますよ」
ポーランド西部のポズナニ出身で国立大学で物理学を専攻。テレビの取材で訪れた秋田県出身の女性に出会い、結婚して娘が生まれたことで平成15年に秋田へ移住する。いくつかの日本企業で働いて商習慣と日本語を覚え、25年から母国のサラミの輸入販売を始めた。
亡き大叔父が母国で食肉製造業に携わっていたことで、次第に「自分で作った母国の本格ソーセージを日本で広めたい」と思うようになる。母国の製法を学び、試行錯誤をしながら作った試作品を、飛び込みで飲食店に持ち込んで食べてもらった。27年から横手市の精肉店の一角で製造販売を開始。事業拡張のため5月、大仙市でスーパーマーケットだった建物を改修した新社屋を竣工(しゅんこう)した。ドイツ製の大型機械を導入。県産豚肉を主な材料に現在は月6〜7トンのソーセージ、ウインナーを製造する。
ブランドとロゴはポーランドをイメージ。6月からは県内大手小売りチェーンとの取引も始まった。安くて質の高い品を毎日、食卓で楽しんでもらえる「ソーセージ革命を起こしたい」と意気込む。(藤沢志穂子)
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◆食肉加工技術の架け橋に
--目指す味とは
「朝昼晩、毎日食べても飽きない味。ソーセージの味は国によって異なり、ドイツは塩辛く、ポーランドは甘みやうまみが少ない。いずれも日本人には合わないので、グルタミン酸をベースに塩こしょうを加味した味が基本。火は通してあり、そのままスライスしてハムの代わりにサンドイッチに入れてもいい。添加物を少なくし、肉の質の高さで勝負している」
--食肉製造業は家業と
「大叔父がポーランドの有名な食肉製造業企業にいて、父から生前の大叔父の話を聞いていた。わが家ではいつもおいしいハム・ソーセージを食べ、手作りもしていたので自然に志すようになった。大学で専攻した物理学は、機械のオペレーションや材料の配合など、ビジネス全般に役立っている」
--故郷には戻らないのか
「子供のころは社会主義国で、希望が持てず外国に行くことが夢だった。戻るつもりはなく、妻の実家の墓に入ることも決めた。ただポーランドはEU(欧州連合)加盟国で、ビジネスパートナーもいて出張に出かけており、仕事上で都合が良いので国籍は持ち続けている。自然豊かな秋田と、ポーランドの食肉加工技術を結ぶ架け橋になりたい」
--今後の目標は
「値段が高くておいしいのは当たり前で、安くて良い品を展開したい。10月から手頃な価格の商品を出す予定がある。3年以内に東北6県のスーパーで、10年以内に全国の都道府県で商品を扱ってもらうことが目標。そうなったら『第2工場』を建設できるかな」
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秋田県大仙市堀見内字穴沢3の1。平成22年1月創業。「ポルミート」ブランドによるソーセージ・ウインナーの製造販売。資本金2000万円。従業員10人。28年度の売上高は2172万円。(電)0187・73・6029。http://www.polmeat.jp/