さらば、土星探査機「カッシーニ」 研究者が語る、その「最期」と活躍の軌跡

--どこに衝突させるかは、もう決められているのですか?

赤道の近くと決まっています。燃料の残量が少ないので、燃料系の数値が間違っている可能性を考えて、最小限の燃料で土星に突入できる場所として赤道が選ばれました。

--カッシーニの土星突入によって、どのようなことがわかるのでしょうか?

イオンニュートラル質量分析計が搭載されているので、超高層大気の組成がわかります。地球でいうと低軌道衛星の少し下ぐらいの高度です。それくらいだと低密度の空気分子が少しあるので、高層大気の組成がわかるんですね。一般にいう「天気」があるのは対流圏ですが、それよりもはるか上層なので、天気の情報がわかる見込みはありません。

--大気圏突入時、カメラなどの観測機器はどのくらい持続するのでしょうか? 

観測機器はだいぶもつんですけれど、それ以前にデータが送れなくなってしまいます。画像データはファイルが大きいので、高指向アンテナを使う必要があります。このアンテナは正確に地球に向ける必要があるのですが、大気摩擦の影響でアンテナがブレてしまうと、こちらでデータを受信できません。

大気に突入時、カッシーニは燃え尽きるかなり前に大気摩擦の影響で姿勢制御ができなくなり、制御不能のきりもみ状態で落ちていくと予想されています。ですので、地球で受信するデータが途切れるのはカッシーニが燃え尽きるときではなく、コントロールを失うときだと考えられます。姿勢制御のデータは最後まで送信し続ける予定なので、そのデータから大気摩擦の大きさと高層大気の密度を測ることができます。

会員限定記事会員サービス詳細