熊木徹夫の人生相談

母の在宅介護 1人で心細く心身共に疲れました…

回答

 表沙汰になりにくいものの、恐らく日本中で同様の悩みを抱えている方がいるはず。あなたの悩みの全貌は分かりませんが、私も想像をたくましくして、問題への肉薄を試みましょう。通常、98歳のお母さんが昨年の大けがまで無事過ごしてこられたのは、当然のことではない。恐らくは、3人の子たちに心配をかけまいとして、養生に努めてこられたはず。そして3人の子たちも無事な母を横目に、まるで息を殺しているかのように、母の今後について注意深く触れずに来たことでしょう。特に、違う所帯に属する兄姉は、今住む家族で手いっぱい、できれば母の介護は思い描きたくないし、大事にならないよう祈っていたかもしれません。

 しかし、Xデーは来てしまいました。その途端、母への思慕、それとは逆の彼女への関わりの煩わしさ、そういった各人が持つ複雑な感情がないまぜになる。そしてそれが介護への温度差、責任感の多寡をあらわにし、兄弟相互の憎しみを生む。母の一番身近に居るあなたは、介護の当事者として兄姉に物申す権利はありますが、実際にそうすれば、たちまち四面楚歌(そか)となり、疲労困憊(こんぱい)でうつ状態になるのは必定です。

 母への愛情はひとしお、兄姉への意地もあるあなたですが、理想のお見送りをするために、あなたの余生の全てを賭してはなりません。介護はエンドレスゲーム、予定調和ではいかないもの。まずは、内科や心療内科に行くなりして、自らの心身を立て直すこと。悲壮感に満ちた介護生活は母子共に不幸を呼びます。使える社会資源は遠慮なく使い、周りの人々の援助もありがたく受けましょう。介護とは、大切な人の死に相対しながら、自らの生の在り方を改めて問い直すことです。

回答者

 熊木徹夫 精神科医。48歳。「あいち熊木クリニック」院長。著書に『精神科医になる』『君も精神科医にならないか』『ギャンブル依存症サバイバル』など。

相談をお寄せください

 住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記のうえ、相談内容を詳しく書いて、〒100-8078 産経新聞文化部「人生相談 あすへのヒント」係まで。

 〈メール〉life@sankei.co.jp

 〈FAX〉03・3270・2424

会員限定記事会員サービス詳細