田中一世の政界徒然草

参院自民党に新たなドンが誕生か? 青木幹雄氏譲りの老獪さ 国会終盤に秘めたる腕力見せつけ…

 典型例が、吉田氏の部下にあたる参院国対委員長を務めてきた松山氏の初入閣だ。先の通常国会では重要法案の成立に向け、文句一つ言わずに野党との折衝にあたった。吉田氏はそんな松山氏を首相に推薦し、早々に初入閣の方針が固まった。

 吉田氏は永田町以外での知名度は低いが、現在の参院自民党の最高実力者である。自身の入閣には興味を示さない。周囲には「何を考えているかわからない」とみられがちだが、目指すところは、村上正邦元労相(85)や青木氏らかつてのドンと同じ。「衆院や首相官邸にモノが言える参院、政局に振り回されない熟議の参院」を作り上げることであるのは、これまでの言動からも明らかだ。

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 「全部、あの人のシナリオ通りなのだろう。恐ろしい人だ…」

 自民党幹部が思わずこう漏らした出来事が、先の通常国会であった。

 会期末が4日後に迫った6月14日。「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の参院審議は、民進党などが参院法務委員長の解任決議案などを連発したことで暗礁に乗り上げていた。会期延長は不可避とみられていた。

 だが、ここで吉田氏は、委員会採決を省略して本会議ですぐに採決する「中間報告」による法案成立に踏み切った。誰も予期しなかった離れ業だ。

 吉田氏は「野党に譲りすぎだ」と衆院側に言われることがあるほど野党との協調を重視する。しかし、今回は野党の姿勢を審議拒否と受け止め、突き放した。しかもこれを独断し、与党幹部が「中間報告を実施する」と伝えられたのは14日の当日。永田町は大騒ぎになった。

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