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国内唯一の空挺部隊である第1空挺団。「最強」と名高い彼らが使用する落下傘の補給・整備を行うプロの集団が、千葉県松戸市にある松戸駐屯地の関東補給処松戸支処落下傘部だ。
落下傘の補給・整備を行う自衛隊唯一の機関で、年間約8000個(うち人体用が約7000個、物料用が約1000個)の落下傘が持ち込まれるという。所属の71人中28人が女性自衛隊員で、女性の割合が高いのも特色だ。
持ち込まれた落下傘は、プロの目による厳しい点検を受ける。数多く設定されたチェック項目に従い、わずか1ミリの傷も見逃さない。傷が見つかった落下傘は修理に回される。
落下傘の大部分は薄いナイロン製で、滑りやすく縫いづらい。それでもミシンや手作業でミリ単位を軽やかに縫うさまは、まさに職人技。一人前と認められるまで10年はかかるという。
修理された落下傘の一部は、國弘祥史同部長(55)以下31人の自衛官が実際に空挺降下を行い、身をもって安全性能をチェックする。絶対の安全性を保証し、送り返すのだ。
昭和29年の同部創設以降、30万個以上の落下傘を手がけたが、一つも整備不良による事故は起きていない。「細かい作業だが、命に関わる大事な仕事。全員が責任感を持って作業している」と國弘部長。「先代から築かれてきた無事故の記録を次につないでいきたい」と、今後を見据える。
最強集団の隊員たちが背負い、命を預ける落下傘の裏には、命を託せるだけの理由が詰まっている。(長谷裕太)