緊張と不安、自信と責任感。入り交じる感情を抱え、福島県南相馬市に向かった。平成23年3月11日の東日本大震災発生から約1カ月後、行方不明者の捜索に招集された。
住宅街から海辺へ、海辺から住宅街へ-。丹念に捜索していると、2つの時計を見つけた。地震発生時間を示し、止まったままの掛け時計と、同じく津波襲来以降、時を刻めない目覚まし時計。「怖がっている場合じゃないな」。奮起するのに時間はかからなかった。写真を見つけては保管し、「どうか無事でいるように」と祈った。
体を動かすのが好きで高校卒業後の昭和58年に入隊。充実した日々を過ごしたが、女手一つで育ててくれた母をそばで支えるため、2年後に退官した。
その半年後、実家近くの群馬県上野村で日航ジャンボ機墜落事故が発生した。テレビに映し出される自衛隊員の姿を目にし、「心にグッときた。とにかく何かしてあげたい」と予備自衛官として復帰した。
阪神淡路大震災など、天災が起こる度、「必要なら俺を呼んでくれ」との思いが強くなる。