トランプ米政権が、通商法301条に基づいて中国による知的財産侵害の実態に関する調査に着手した。通商法301条は、貿易相手国の不公正な貿易慣行に対する報復措置を規定したもので、日米通商摩擦が激しかった1980年代後半から90年代に米国が同条に基づく制裁をちらつかせて日本に対して輸出制限や市場開放を求めた実績がある。中国メディアは「自由貿易の原則を守れ」などと批判し、ネット上でも「米国製品をボイコットしろ」などと強い反発を見せている。ただ、一方で中国当局からは「貿易戦争は双方が敗者になる」といった反応もみられ、米国と本格的に対立するのは避けたいという本音もうかがわれる。
「単独主義ムードが濃厚な時代遅れの条項を採用した」
中国の有力経済紙「第一財経日報」(電子版)は8月20日、米国が301条に基づく調査に着手したことについて報じた。
トランプ大統領は8月14日、301条に基づいて中国による知的財産の侵害の実態を調査するよう通商代表部(USTR)に命じる覚書に署名。それを受け、USTRは同18日に調査を始めたと発表した。今後、USTRは10月10日に公聴会を開いて産業界の関係者らから中国での規制や企業活動の現状について意見を聞くなど、ある程度の時間をかけて調査を進めていく方針だ。
米国が調査結果に基づいて「クロ」だと判断すれば、関税引き上げなどの一方的な制裁措置を取ることができる。世界貿易機関(WTO)のルールに抵触しかねない劇薬で、かつて日本も日米通商摩擦の時代に苦しめられた。
前述の第一財経日報の記事は「301条は米国が1980年代のレーガン政権時代に頻繁に使っていた一方的な法的ツールだ。95年のWTO発足後、米国はより良い多角的貿易の協調メカニズムを持つようになり、301条は既に使われることが少なくなっている」と指摘。その上で「301条は既に20年超、いかなる現実的な効果も生み出していない」とも述べ、いかに301条の活用が時代遅れのものかを強調しつつ、WTO体制に反するものだと非難して「多角的な規則の破壊者になるな」と米国側の対応をいさめる。