帰国後、幼少期から慣れ親しんだ須磨海水浴場にマットを導入しようと、海の家の店主らに協力を求めた。最終的に、NPO法人「神戸ライフセービングクラブ」(神戸市)のライフセイバーや医師、市職員ら12人が企画に賛同。昨年12月に須磨ユニバーサルビーチプロジェクトを立ち上げた。
高額な海外製…ネットで資金募る
ただ、マット導入までのハードルは高かった。
約130万円と高額で、しかも海外にしか販売元がなかった。当初は代替品として、ヨガマットやベニヤ板などを砂浜に敷いて試してみた。しかし、素材が柔らかすぎて車いすの車輪が埋まるなど、安全性や耐久性に問題があった。
そこで始めたのが、海外製ビーチマットの購入資金をインターネットで募る「クラウドファンディング」。口コミで理解が広がり、約140人から約140万円が集まった。米国製のマットを購入。同プロジェクトのメンバーが資金を出し合い、大型車輪で砂浜を移動しやすい水陸両用車いすも導入した。
7月13日の海開きに合わせ、須磨海水浴場にビーチマットが登場すると、木戸さんのもとには毎日のように県内外の障害者施設や、障害者の保護者らから問い合わせが入った。
反響の大きさに驚く一方、「これまでビーチのバリアフリーについて発信する人が少なかった。須磨から全国に、この流れを広げたい」と木戸さん。全国各地のビーチにマットを貸し出す出張も視野に入れ、海のバリアフリー化推進に力を入れていく方針だ。
全国普及は道半ば
欧米などと比べ、日本では車いす利用者が自由に砂浜を移動できるような設備がある海水浴場は限られている。なぜ、バリアフリーが全国に広まらないのか。