紀伊半島豪雨6年

父が守った林業と沢ワサビ 遺志継ぐ奈良・野迫川村の男性

 ワサビ田が一段落したことで、一馬さんは家業の林業を本格的に教わり始めた。父と平日は山に入り、土日はワサビ田へと通う親子二人三脚の日々。まもなく一馬さんの結婚も決まった。だが、結婚披露宴を4日後に控えた昨年10月18日、晃さんは伐採木の搬出作業中に斜面を滑落、帰らぬ人となった。

 いつも目の前にあった父の背中が消えた。だが、周囲の人に「仕事中にたばこを吸うときのタイミングとか、親父さんに似てるな」といわれるたびに、自分の中の父を確認する。林業の世界は厳しい。若いがゆえに取引先に足下を見られて悔しい思いをすることもあるが、父が築いてきたものを「やめるわけにはいかない」という強い思いが、不安を打ち消す。「いつか父以上のものを目指したい」。その背中を追い越す日を夢見て、前を向く。

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