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折元立身(おりもと・たつみ)さん(71)は世界的に知られる現代美術家だ。その表現方法はきわめて奇抜。パンで顔を覆って街に出没する。作品に母親を登場させる。その母親の男代(おだい)さんが5月、98歳で大往生を遂げた。20年以上介護してきた折元さん。男代さんは、アイデアの源泉でもあった。最愛の人にして芸術の原動力。両方を同時に失った折元さんは、いまどうしているのか。川崎市の自宅を訪ねた。
1人ぼっちになってしまった
「亡くなって1カ月は何も手につかなかったが、ようやく元気が出てきてドローイング(素描)を描いている。アイデアが次々に浮かんでくる」
自宅居間。床には展覧会のカタログや郵便物、衣類から正体不明のポリ袋までさまざまなものが散乱している。カオス状態だ。
「母の生前は介護のヘルパーが来ていたが、もううちには誰も来ない。人が来ないから、片づけをしなくなった」
1人になってしまった。ヒシヒシと感じるようになった。
「寝たきりでもおふくろがそばにいれば声をかけたり、何か食べさせることもできた。いまは1人だから食事が楽しくない」