高等教育を無償化すれば、大学や高校のレベルは今より下がる心配がある。とりわけ勉強が好きではなくても、「タダならいくか」というくらいの理由で、進学を選択する人も出てくることは容易に想像がつく。
世界をリードする人材を育てていくという意思があるのなら、経済的には門戸を広げ、意欲や能力の高い子供にはそれに見合う内容と制度、例えば飛び級などに象徴されるようなエリート教育が必要である。つまり、「よりできる子」に応える教育内容と制度をしっかりと作らなくてはならないのである。そのためには、無償化とはある意味正反対の、違いを強調する非平等な教育も必要であるということだ。本来は、それこそが多様性を認める教育ということになるのではないか。教育のレベルが全体として下がれば、有能な人材は、海外へ流出していく。そのことに、危機感を強めてもらいたい。
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【プロフィル】細川珠生
ほそかわ・たまお 元東京都品川区教育委員。ラジオや雑誌でも活躍。父親は政治評論家の故細川隆一郎氏。千葉工業大理事。