自民党総裁としての安倍晋三氏が、憲法改正の具体案として「教育の無償化」を打ち出し、憲法改正の議論の中でも「無償化」についての検討が始まった。これまでの議論は、経済対策の一環、子育て支援策の中で行われてきたものだった。家庭の経済状況に関わらず、高等教育を受けられるように、まずは給付型奨学金の充実により教育費の軽減を図る。また幼児教育の段階的無償化や高校生への奨学金給付の拡充なども盛り込まれ、安倍政権が家計における教育費の負担軽減に力を入れているという意思を表してきた。
しかし、これは同時にアベノミクスによる経済再生が足踏み状態になっていることへの打開策ともいえる。子育て世帯の消費意欲を喚起するために、負担感の大きい教育費の軽減を図っているということだ。子育て真っ最中の身にとっては、ありがたいことではあるが、財源はどうするのか、次世代へのつけ回しにならないのか、「お金の出どころ」への懸念を抱くことになれば、結局は消費喚起にはつながらないのである。
その中で教育の無償化を憲法に規定するという考えは、単なる家計支援にとどまらず、国家における教育の重要性を示すものであると受け止められた。