映画「関ヶ原」ロケ地14カ所熱く 観光振興の起爆剤に 滋賀

 「近江を制するものは、天下を制す」-。26日から全国ロードショーされる、司馬遼太郎原作の映画「関ヶ原」(原田眞人監督・脚本)。実際の合戦は、県境を越えた岐阜県が主戦地だったが、滋賀でも多く撮影が行われた。彦根城や比叡山延暦寺、愛知川など県内14カ所がロケ地として使用され、協力した市民からは「観光振興の起爆剤に」として、上映を心待ちにする声があがった。

 慶長5(1600)年9月、豊臣家への忠誠から立ち上がった石田三成(岡田准一)率いる西軍と、天下取りの野望を抱く徳川家康(役所広司)率いる東軍が、関ヶ原(現在の岐阜県関ケ原町)で天下をかけて激突した。映画は世紀の合戦に臨む三成と家康、そして武将たちの姿に、三成に仕える伊賀の忍び、初芽(有村架純)の行動などをからめながら描く。

 当時、県内では、大津城(1601年廃城)などで前哨戦が、また戦の後にも三成が入城していた彦根市の佐和山城(1606年廃城)でも戦いがあったとされ、関係が深い。この映画では京都や滋賀をメーンの撮影地として数々の名跡が使用された。

 その一つが湖東三山の一つとして知られる、古刹(こさつ)・金剛輪寺(愛荘町松尾寺)。鎌倉時代に建立されたとされる檜皮葺の国宝の本堂など、歴史を感じさせる建物が残り、徳川方の本陣で決戦前の軍議を行うシーンなどが撮影された。

 戦いの当時、金剛輪寺は直接関わりはなかったとされるが、同寺の濱中大樹住職(53)は「長年、大勢の人が受け継いで守ってきた文化財。ロケ地として使用され、その重要性や、ありがたさを多くの人が感じてくれるきっかけとなれば」と話した。

 さらに彦根城(彦根市金亀町)では、西軍が根拠地とした大垣城にみたて、三成が関ヶ原へ出陣するシーンや、戦の後に大津城で三成が縄にかけられるシーンが撮影された。

 撮影では、多くの市民が活躍した。ロケ中の炊き出しや機材の手配などを支援した「彦根を映画で盛り上げる会」の和田一繁副会長(49)は「彦根城の天守閣は大津城のものを移転したと聞いており、佐和山城跡も見える。長い歴史の因縁がこの映画で繋がると考えると面白い」と撮影を振り返る。また、「ロケを受け入れることで、彦根の歴史や良さが全国に伝わると、町も元気になる」と話し、期待を膨らませる。

 他にも、愛知川では三成が処刑されるシーン、天寧寺(彦根市里根町)では三成と豊臣秀吉の出会いのエピソードとして知られる「三献の茶」のシーンなど県内14カ所で撮影が行われたという。

 近畿の重要な交通拠点として常に人が行き交い、歴史と伝統の宝庫として発展してきた滋賀の魅力を、映画を通して再認識するのも面白そうだ。

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