きたかん感度涼好

箱島湧水(東吾妻) 水量豊かな自然のシンボル

 駐車場から歩き始めると、セミしぐれとともに瀑音が耳に飛び込んでくる。

 箱島湧水は、箱島不動尊の脇に立つ樹齢500年ともいわれる杉の木の根元からガンガンと湧き出していた。湧水のイメージは完全に覆る。水は高さ12メートル、幅7メートルの「山雀(やまがら)の瀑」と呼ばれる滝をつくって落ちていき、鳴沢川となって吾妻川に注いでいく。

 湧出量は日量約3万トン、約8キロ離れた榛名湖からの水とも伝えられる。水温は常に13度。口に優しい軟水でそのまま飲めることから、汲みに来る人が後を絶たない。取材に訪れた日にも埼玉県蕨市から来たという会社員、酒井晋介さん(53)夫妻と出会った。スマートフォンの観光情報サイトで知ったという酒井さんは「木々もみずみずしく納涼スポットとしては最高」と大切そうにペットボトルを抱えていた。

 鳴沢川沿いには3つのホタル保護地から成るホタルの郷がある。地域住民が長年、清掃活動などに取り組み毎年自然に発生するゲンジボタルとヘイケボタルを見守ってきた。また、湧水のうち約1千トンは水道用水として利用されているほか、農業用水、養鱒場用水など住民生活に密着している。今年6月には61年ぶりに用水を活用した水力発電が再開された。

 昭和60年、「保全状況が良好で地域住民らによる保全活動がある」ということから名水百選に選ばれた。町地域政策課長の浅見梅雄さん(58)は「自然が豊かな東吾妻町にあっても、箱島湧水は自然のシンボル」と胸を張った。(前橋支局 椎名高志)=おわり

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 ■名水百選 すべての都道府県から最低1つは選出。群馬ではほかに雄川堰(甘楽町)、茨城では八溝川湧水群(大子町)、栃木では出流原弁天池湧水(佐野市)と尚仁沢湧水(塩谷町)が選ばれた。