大北森林組合不正受給 長野県職員11人の賠償責任認定 検討委報告書

 ■請求額1億5300万円上限

 大北森林組合(大町市)による補助金不正受給事件で、県が設置した検討委員会(委員長・碓井光明東大名誉教授)は23日、同組合と事件を主導した元組合専務理事、補助金交付の手続きに関与した県職員11人について、損害賠償責任を認定する報告書を太田寛副知事に提出した。職員の一部には地方自治法上の「重大な過失があった」と指摘し、巨額の公費損失を招いた職員の責任を断罪した。 (太田浩信)

 報告書は、間伐などの森林整備事業にかかわる指導・監督の不備を問われ、国から課せられて納付した加算金約3億5300万円に関し、損害賠償請求を誰に問えるか判断した。

 国と県の時効の対象範囲が異なるため補助金返還請求が行えず、国庫へ返還した補助金約1億2600万円に対しても、同様の判断を示した。

 それによると、職員に対し賠償請求できるとしたのは、事実上、県の損害となる国に納付した加算金だと指摘。同組合への補助金の交付認定で帳簿上の不備や書類のチェックを怠ったほか、交付申請時に未完了の事業が存在する可能性がありながら手続きを進めたことなどを「過失」と認定した。

 最終的な請求額については、返還請求できない補助金も含め、県が判断すべきだとの見方を示した。

 ただ、職員11人の加算金に絡む請求額については、各自の職分などを勘案し、約1億5300万円が上限とした。職員個々に対する請求額は明示していない。

 その上で、地方自治法上、賠償額決定の権限を持つ県監査委員に決定を委ねるべきだと強調。同委の決定を受け、阿部守一知事が最終判断することになる。阿部氏は産経新聞の取材に、「報告書の内容を踏まえ、県民の理解が得られる対応をとりたい」と明言しており、同委の決定を最大限尊重するとみられる。

 碓井氏は報告書提出後、記者団に、「法的に請求可能なものだけを示した」との認識を示した。

 事件をめぐっては、住民監査請求を受けた県監査委員が今年2月、不正に関与した職員への損害賠償を検討するよう阿部氏に勧告。加算金納付から1年となる9月12日までに検討し、厳正に対処するよう求めていた。

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 ■県のこれまでの対応 行動計画を策定

 大北森林組合による補助金不正受給事件で、平成19〜25年度にかけて、森林整備事業を行ったように見せかけるなどして、同組合が受け取った補助金の総額は、約14億5200万円に上る。県は27年8月、事件の発生過程や背景など有識者による検証結果を踏まえ、事件への対応方針を決定。同組合への補助金の返還請求や刑事告発を行った。

 同組合への返還請求額は、時効成立分などを除く約9億1500万円。これを受け同組合は今年1月、61年度までの33年間にわたる長期の返還計画を県に提出した。組織再生に向け、県などの指導を受けながら抜本的な経営改善にも取り組んでいる。

 同組合や元専務理事に対する刑事裁判では、補助金適正化法違反などの罪で長野地裁による有罪判決が今年4月に確定した。

 県は27年12月、補助金の申請や交付にかかわるなどした職員21人を停職から戒告までの懲戒処分とし、直接の関与はないが現場職員に過重な圧力をかけていた職員4人にも訓諭を行った。阿部守一知事に対しても「責任を明確化するため」として、減給3カ月の処分を行った。

 これに先立つ同10月には、再発防止に向け、県林務部の組織のあり方を見直すため、コンプライアンス(法令順守)確立のための行動計画を策定。同時に、林務部以外の職員の意識改革や資質向上にも取り組んでいる。

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 【報告書骨子】

 ・補助金交付に当たり、大北森林組合と元組合専務理事には民法上の不法行為があり、当時の県北安曇地方事務所の職員にも重大な過失などがあった。双方に対し、国に納付した加算金(約3億5300万円)の損害賠償を請求できる

 ・国庫に返還した補助金(約1億2600万円)の損害賠償も、同様の理由で同組合と同元専務理事に請求できる

 ・県職員への損害賠償請求は、地方自治法と民法の規定に基づく請求が生じるため、県監査委員に対し要求監査を行い、賠償額を決めることが考えられる

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