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長年の苦悩を背負い続けた元米兵は、約束を果たした安堵(あんど)からか、慈愛に満ちた表情に変わっていた。米西部モンタナ州に住む元海兵隊員、マービン・ストロンボさん(93)。「必ず家族の元に返す」。先の大戦の戦地サイパン島で、日本兵の遺体から日章旗(寄せ書き日の丸)を持ち帰り、73年の時を経て初来日し、願いをかなえた。遺骨や遺灰もなかった遺族は、帰ってきた日章旗を「宝」と呼び、むせび泣いた。「73年後の奇跡」のニュースへの反響も大きい。(社会部 天野健作)
狙撃兵として激戦地へ
精悍(せいかん)な顔付きとピンと伸びた背筋。来日直後の記者会見で見せたストロンボさんのかくしゃくたる姿は、かの戦地を駆け巡った雰囲気を醸し出していた。
「多くの人が殺され、そして命を落とした。非常に悲惨な光景だった」。ストロンボさんは戦時中、海兵隊の狙撃兵として、サイパン、テニアン、タラワという激戦地で戦った。
1944年7月ごろ、サイパンに上陸してしばらく歩いていると大砲があるのを目にした。興味を持ってじっと眺めていると自分の隊から離れてしまった。すぐに追いかけようとしたが、気がつくと日本陣営の前線に立っていた。